4.ネット葬儀社の価格破壊
〇高齢化でニーズが増えても葬儀業界は苦戦
高齢化が進む日本、厚生労働省の推計によると、2019年の死亡者数は137万人が亡くなっています。2040年には年間約168万人が死亡するとも予測されています。そんな中、葬儀業界は成長産業だと言われてきましたが、今、葬儀業界は変革期にあります。それは異業種からの参入、とりわけインターネットの発達とネットから顧客を呼び込もうとするネット葬儀社の出現です。
インターネット葬儀社には代表的なものに「イオンのお葬式」、「小さなお葬式」、「よりそうお葬式」などが早くから立ち上がっています。そして、なぜネット葬儀社が注目を集めているのか、それは明瞭な価格と安さにあります。
〇ネット葬儀社の台頭
昔から葬儀に対して「料金が不明瞭」というイメージがありました。葬儀で喪主になることは何度もなく、「祭壇、お棺、骨壺、霊柩車・・・合わせていくらです」と言われても、何がどういいのか悪いのか一般の人には分からないことも多いと思います。そこに、必要な葬儀サービスを分かりやすくひとまとめにし、低価格を打ち出してきたのが、ネット葬儀社です。
〇葬儀の価格破壊
ネット葬儀社だけでなく異業種の参入が相次いだことで、葬儀業界内は競争が激化しました。その結果、葬儀単価の低価格化が進んだのです。もちろん、価格が下がるということは、消費者の利益につながります。
〇あくまでネット葬儀社は仲介業者
ネット系葬儀社が、全国に斎場を持って葬儀をするわけではありません。ネット葬儀社は、消費者からの受注(電話申し込み)を地方の提携葬儀業社へと仲介し、その際に手数料を得るというものです。「葬儀社」とはいいながら、自社で葬儀そのものを実施するわけではないのです。
因みに、仲介料は「価格の15~30%ぐらい」といわれていますが、ネット葬儀社が提案する葬儀の価格がはじめから低いこともあって仲介料を支払った残りで葬儀をする地域の葬儀業社は「仲介手数料を差し引くと粗利がほとんど残らず、人件費も出ないこともある」というのが実情です。
しかし、こうした零細葬儀社は経営が苦しいところも多く、背に腹は代えられず、少しでも売り上げを増やそうとネット葬儀社の仕事を引き受け、結果としてネット葬儀社の下請けになっていくという構造になっています。
※いくつものネット葬儀社と提携している地域の葬儀社は、自社の葬儀パンフレットの他、ネット葬儀社のパンフレットをいくつも持っています。そこで、お客様が何処に連絡して自社に来られたか聞いてパンフレットを選択し、葬儀の話し合いに臨みます。
〇互助会も低価格化へ
冠婚葬祭互助会(互助会)もネット葬儀社のあおりを受けています。もともと互助会は、会員募集の費用であったり、互助会システムを維持するため(斎場建設、互助会勧誘員の人件費など)の費用であったりと、はじめからその分が葬儀価格に繰り入れられています。
しかし、ネット葬儀社の低価格戦略、時代の小規模葬儀化により、今や消費者ニーズに合わなくなりつつあります。多人数収容の会館を維持管理しながら、税金等固定費もかかってきます。「ネット葬儀社のような価格帯では、とてもじゃないが提示できない」というのが本音だそうです。ネット葬儀社は、依頼を地方の葬儀社に回すだけなので、斎場の維持管理も税金の心配もないのです。
互助会でも、ネット葬儀社と提携している例は少なくありません。同じ自社会館を使用していながら、互助会で行う葬儀とネット葬儀社で行う葬儀の料金格差が会員の不満にもつながりかねず、互助会の悩みの種となっています。
〇ネット葬儀社の課題
もちろん、ネット葬儀社の台頭は消費者に応えた価格破壊と言えます。これまでの葬儀業者に経営努力が足りていない部分も多く、今後もネット葬儀社は成長すると思われます。
しかし、17年以降、ネット葬儀社各社が「追加料金不要」といった表示をしていたにもかかわらず、実際には追加料金が必要なケースが多々あったとして、消費者庁から措置命令を立て続けに受けるなど、消費者の信頼を損なうような事態もありました。例えばプランに返礼品、料理、室料などが付いておらずこれが追加料金として葬儀代に上乗せされたり、祭壇の花が貧相で追加を葬儀社に申し出る消費者いて追加料金が発生していったようです。また高い手数料を支払うために、葬儀社が単価の低い商品で対応し、結果としてお客様に満足してもらえず、商品のグレードをアップすることで追加が発生する場合がありました。(週刊ダイアモンド参照)